AK-47の事例:アフトマットをアブトマットに「直した」人がいた

 僕は「ロシアの軍事用語のカタカナ表記、アブトマット?、アフトマート?、アフタマート?」でソ連・ロシアの兵器の名前などのロシア語がおかしなかなカタカナ表記になっていると書きました。今回はその記事の続編のような記事で、お金を掛けずに良質な情報を手に入れる手段であるWikipediaにひそむ問題点を考えます。

 「ソースはWikipedia」というと馬鹿にされますが、資料源が明記されていればブログやQAサイトなどよりはるかに信頼性があります。とはいうものの、Wikipediaは誰でも編集できるので時間がたつにつれて徐々に正しくなることもありますが、正しい情報が間違った情報に書き変えられることがあります。僕が気が付いた例を挙げます。

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Wikipediaの2021年10月15日以前の「AK-47」の記事のスクリーンショット

 AK-47の記事では、2021年10月15日以前は「アブトマットカラシニコバソーラクスェーミ」と書いてありました。「アブトマットカラシニコバ」までは英語式ローマ字転写の"Avtomat Kalashnikova"をそのまま読んだもので、ロシア語を知っている人は絶対こんな書き方はしません。一方「ソーラクスェーミ」はロシア語で47を意味する"сорок семь/ sorok cem'"をロシア語を学んだ人がカタカナで表記したものです。一人の人間がこういう書き方をするのだろうかと不思議でした。
 そこでどうしてこうなったか調べてみました。Wikipediaでは、誰がどのような編集をしたかの編集履歴を見ることができるので「履歴表示」をたどってみると数十分で理由がわかりました。

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Wikipediaの「AK-47」の記事、「アフトマット」から「アブトマット」に編集

 2021年7月23日に「アトマット」が「アトマット」に変えられていました。「ソーラクスェーミ」に手を付けることができなかったことを考えると変えた人物はロシア語を知らないようです。この人物が「誤りだ」と判断した「アフトマット」という表記を「正しい」と考える「アブトマット」直したのでしょう。つい最近の話ですね。
 曲がりなりにもロシア語の発音に近い「アフトマット」(僕はこうは書きませんが「アフトマット」はあり得る表記です。)が英語式に戻されてしまいました。僕に言わせれば余計なお世話です。
 AKMの部分の「エーケーエム」も怪しいですね。ロシア語を少しでもかじっていれば「アーカーエム」になるはずです。Wikipediaの記事ではこういうことも起きるという話です。 

 WikipediaのAK-47の記事の右上に表示される「履歴表示」を開くと2005年頃の「最古」の記事は転送先として「小銃」を見ろとの記述があるだけでしたが、2005年6月23日に独立した記事になったようです。Wikipediaのアカウントがなくても見ることができますから覧になることをお勧めします。記述がどんどん変化していくのが見て取れます。